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教育特区に認定されている区域では株式会社による通信制高校も設立できる

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通信制高校を株式会社が運営?教育特区とは?

会社が運営
学校は国や県などが設置する公立校と学校法人が設置する私立校があります。

しかし、通信制高校の中には「株式会社」が設置している学校があります。その背景には「教育特区」があるのですが、一体どのような制度なのでしょうか。

そして、株式会社立の通信制高校とは?詳しくご説明していきます。

株式会社立の通信制高校が誕生した「教育特区」とは?

「教育特区」という言葉を聞かれたことがあるでしょうか?

教育特区は2003年に当時の小泉内閣が規制緩和策として導入した「構造改革特別区域(構造改革特区)」の中の教育分野の特区のことを指します。

ちなみに構造改革特区には、教育分野のほかに物流関連や国際交流関連、農業、エコロジー関連などがあります。

教育特区の内容

教育特区(教育関連の構造改革特区)では、学校法人でなくても学校が設立できるように規制緩和を行いました。

具体的には「株式会社」が学校を設立することを可能にしたのです。他にも地域の特色を生かした特別の教育課程の編成が可能になっています。

この制度は小学校の外国語活動にも利用されていて、2003年には群馬県太田市の「太田市外国語教育特区」や福島県会津若松氏の「会津若松市IT特区」などの導入例があります。

教育特区(株式会社立の学校)のメリットとデメリット

学校教育特区で認められた株式会社立の学校では独自のカリキュラムを組むことができます。また、校舎や運動場などの施設・設備に関しての規制がゆるいという特徴があります。

一方で、株式会社立の学校は「私学助成金」が受けられないというデメリットがあります。

教育特区で設立した株式会社立通信制高校の例

三重県志摩市阿児町は光海底ケーブルの陸揚げ基地とインターネット接続網の拠点がある地域です。ブロードバンド(高速大容量)の情報通信ネットワーク資源を活かして「伊勢志摩インターネット高校特区」に認定され、代々木高等学校が設立されました。

他にも全国各地でそれぞれの土地の特性を生かした教育特区があり、株式会社立の通信制高校が設置されています。

株式会社が運営する通信制高校

教育特区として認定され、設立した株式会社立通信制高校には次のようなものがあります。一部をご紹介します。
(2019年1月現在)

学校名 開校年 運営会社 本部所在地
アットマーク国際高等学校 2004年 株式会社アットマーク・ラーニング 石川県白山市美川教育特区
代々木高等学校 2005年 株式会社代々木高校 三重県志摩市伊勢志摩インターネット高校特区
第一学院高等学校 2005年 ウィザス 茨城県高萩市教育特区
兵庫県養父市教育特区
相生学院高等学校 2008年 富士コンピュータ株式会社 兵庫県相生市教育特区
創学舎高等学校 2006年 株式会社愛郷舎 埼玉県深谷市渋沢記念深谷人づくり特区
大智学園高等学校 2006年 株式会社コーチング・スタッフ 福島県双葉郡川内村教育特区
ルネサンス高等学校 2006年 ルネサンス・アカデミー株式会社 茨城県大子町教育特区
愛知県豊田市教育特区(2011年)
大阪府大阪市北区(2014年)
ECC学園高等学校 2008年 株式会社ECC 滋賀県高島市環の郷教育特区
東豊学園つくば松実高等学校 2008年 株式会社つくば東豊学園 茨城県つくば市教育特区
一ツ葉高等学校 2008年 株式会社 I am succsess. 熊本県山都町潤い、文楽、そよ風でつづるまちづくり特区
さっぽろ自由が丘学園三和高等学校 2009年 株式会社札幌自由が丘教育センター 北海道和寒町教育特区
AIE国際高等学校 2013年 株式会社エーアイイー 兵庫県淡路市教育特区

教育特区の通信制高校の取り組み

教育特区で設立された通信制高校では、独自のカリキュラムや取り組みが可能です。実際にどのような取り組みがあるのでしょうか。いくつかをご紹介しましょう。

ネット学習が強みのルネサンス高等学校

いち早くインターネットの学習を取り入れてきました。パソコンやタブレット端末、スマートフォンなどを使って自宅学習を行います。

ネットでの授業が充実しているため、登校日は最短で年間4日だけでOKです。働きながら高校卒業を目指す人や子育てをしながら高卒資格を得たい人、スポーツや芸能の分野で活躍する人などでも学びやすいので人気があります。

不登校生徒をサポートする札幌自由が丘学園三和高等学校

札幌自由が丘学園三和高等学校は株式会社さっぽろ自由が丘教育センターが設置した私立の通信制高校です。

母体はフリースクール札幌自由が丘学園を運営するNPO法人です。同法人は1993年から不登校生徒をサポートするフリースクールを運営し、すでに300人以上の子どもを支援しています。

そういった実績が高く評価され、2003年に構造改革特区として北海道から通信制高校の開校が認可されました。

現在も少人数制で個々の生徒に向き合いながら高校卒業までをサポートしています。

コースは1日3~4時間の授業がある「全日コース」と月1回だけ登校する「月1コース」があります。

自由選択科目には北海道の歴史や文化を学んだり体験実習をしたりする「北海道科」や、カヌーやヨットを体験する「自然体験科」があり、どちらも北海道の雄大な自然を体感することができます。

株式会社立から学校法人化に移行する動きも

構造改革特区で株式会社が通信制高校を設置・運営することが認められた当初は全国各地で多くの教育特区が誕生しました。

しかし、そこで開校した株式会社立通信制高校の中には学校法人に移行しているところがあります。

平成23(2011)年度に文部科学省が実施した「学校設置会社による学校設置事業」調査を見ると、次のようにさまざまな理由や背景があることがわかります。

  • 財政難
  • 生徒の定員割れ
  • 学校の立地や設備面の問題

最大の理由は財政難

文部科学省の調査によると、株式会社立通信制高校の約25%が赤字を抱えていると回答しています。

学校法人には認められるメリットが受けられない

その理由としては、株式会社立の学校には私学助成金が受けられないとか寄附に対しての優遇措置が受けられないといった問題があります。

学校法人が設置・運営している学校に対しては私学助成金や寄付に対する優遇措置があるのに、それが受けられないということは財政面で大きなダメージを受けてしまいます。

財政難から教員不足に

財政難のために教員に十分な給与を支払えないというケースもあります。それがさらに教員不足を招くという悪循環になっています。

その結果、教員は教師本来の業務の他に校務まで行っているケースもあります。

生徒が集まらない

年々進む少子化で、高校も大学も生徒募集には苦慮しています。

通信制高校も同じで、特に知名度が低い株式会社立の学校は定員割れするところが多く見られます。

生徒が集まらないと学費の納入額も減るため、財政難を招く一因になります。

学校の立地や設備面の問題

教育特区は各地方自治体が地元の特徴などをアピールして認可されたものです。そのため、辺境な地域に学校が設置されているケースが見られます。

通信制高校では通学の必要はないとは言うものの、集中スクーリングで本校に行く必要があります。

その場合に校舎が辺境な土地にあると、交通手段や宿泊などで不便な思いをする上に交通費などがかかります。

教育特区では「地域おこし」の一環として学校を設置した側面もあるため、集中スクーリングで生徒やその保護者が訪れることで交通や宿泊、飲食などの需要が高まると期待されている面があります。

しかし、現実には十分な数の生徒が集まらないなどの事情から、思い描いた通りの結果が得られていない特区があります。

施設や設備が不十分

もともと株式会社立の学校は学校法人立の学校よりも運動場などの施設の条件がゆるいという設立のメリットがありました。

しかし、中には設置の条件を満たしていない学校もあり、施設や設備面で不充分であるところが見られます。

教育内容の問題も

教育特区として開校した株式会社立の通信制高校ではサポート校でのスクーリングを禁止しています。

しかし、実態は多くの株式会社立通信制高校が特区外での教育活動をしているという問題点があります。また、課題レポートは簡単な選択式の問題、単位認定試験は成果物の提出だけ、毎年同じ問題を使いまわすなどの状況が報告されています。

その背景には教員不足があります。十分な個別指導ができないため、採点が簡単なマークシート方式の選択問題が増えているのです。

進む学校法人化

このような問題が起こったために文部科学省では規制を強めると同時に、希望すれば株式会社立から学校法人に移行できるよう支援する方向になっています。

運営する側でも株式会社立の通信制高校はビジネス的に利益が薄いという点があり、学校法人化の傾向が進んでいます。

株式会社立から学校法人に移行した通信制高校

以下の学校は株式会社として設立しましたが、現在は学校法人に移行しています。
(2019年1月現在)

  • さくら国際高等学校
  • くまもと清陵高等学校
  • 日々輝学園高等学校
  • 北海道芸術高等学校
  • ヒューマンアカデミー高等学校

今後も学校法人に移行する通信制高校が出てくる可能性があります。

ただ、株式会社立の学校のすべてに問題があるというわけではありません。学校を選ぶ場合は内容をよく確認して、検討することが大切です。

株式会社立の通信制高校とは

2003年から実施された構造改革の制度を利用して地方自治体が「教育特区」として認められると、特区内に株式会社が運営する通信制高校が設置されました。

株式会社立の通信制高校は独自のカリキュラムを導入できる、インターネット学習が中心でスクーリングの日数が少ないなどのメリットがあります。

一方で、本校が遠隔地にありスクーリングへの参加が不便、財政難、生徒不足などの問題も抱えています。

そのため、学校法人に移行している学校もあります。

学校選びの際には、学校の内容をよく調べて検討することが大切です。

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