アバターで学ぶ通信制高校「サイバー学習国」って何?
アバターってご存知でしょうか?
アバターとはインターネット上のコミュニティで自分を表現する人物像(キャラクター)のことで、似顔絵のようなものです。しかし、必ずしも本人と似ている必要はなく、動物やロボットをアバターにすることもできます。
通信制高校の中にはこのアバターを使って通学するスタイルを取っている学校があります。今回はそんな珍しい通信制高校についてご紹介します。
アバターで学ぶ通信制高校「サイバー学習国」のしくみ
アバターというとゲームなどで使う自分のアイコンをイメージされる人が多いのではないでしょうか。
しかし、ゲームではなくて、学習でアバターを使うところがあるのです。千葉県千葉市にある明聖高校という私立の通信制高校では、サイバー学習国を作ってそこで生徒同士の交流や学習を行っています。
では、詳しい内容を見てみましょう。
サイバー学習国がある通信制高校
明聖高校は2000年に千葉県で初の私立の通信制高校として開校しました。
2019年1月現在では千葉県千葉市に本校が、東京都中野区に中野キャンパスがあります。
コースは下記の通りです。
キャンパス | コース |
---|---|
本校 | ・全日コース ・全日ITコース ・通信コース |
中野キャンパス | ・全日コース ・全日ITコース ・3日制コース |
本校WEBコース | ・サイバー学習国 ・サイバーアカデミー |
なお、全日コースは全日制高校のことではなく、通信制高校の通学コースのことです。毎日登校し、5時間の授業を受けます。
また、全日ITコースは毎日登校しますが、必須科目の他にプログラミングやロボット演習などIT関連の授業があるのが特徴です。
通信制高校のサイバー学習国のしくみ
サイバー学習国というのは、WEBコースの生徒が入れるインターネット上の仮想学校に自分の分身であるアバターを通わせて学習するシステムのことをいいます。
通常の学校は登校してクラスの生徒と顔を合わせなければいけませんが、サイバー学習国なら自分で作ったアバターを通わせるだけなので、現実に誰とも顔を合わせることがありません。それでいてほかの生徒とはチャットで会話をするなどの方法で交流がもてます。
自宅で学習する孤独感がなく、しかも人と顔を合わせなくていいというメリットがあります。
不登校を経験した人や人との関わりに不安がある人、引きこもり傾向の人でも安心して学べます。また、地方に住んでいる人でも学習できるのがメリットだといえます。
アバターで登校するサイバー学習の進め方
サイバー学習国での授業の進め方は難しいものではありません。ただし、パソコンやタブレット、スマートフォンなどインターネットにつながる環境が必要です。といってもスマートフォンだけでも可能なので、今の時代ならばどこにいても受講できます。
アバター学習国の学習の流れ
学習の進め方は次の通りです。
- アバターを作る
- 授業(約20分の動画視聴)を受ける
- サイバーチェックで授業の理解度を確認する
- レポートを作成し提出する
アバターを作る
入学したら、まず自分の分身であるアバターを作ります。アバターは「アバターメーカー」を使って、自由に好きなパーツを選んでいきます。
パーツは200以上あり、髪形、顔の形や目・鼻・口などの形、洋服、めがね、アクセサリーなども自由に選べます。その日の気分によって服装を変えるのも楽しいですね。
動画授業を受ける
授業は20分間の動画を見ます。短い時間なので集中して見ることができますが、もし見逃した点やわからないところがあっても、何度でも繰り返し見ることができます。
また、スマホやタブレット端末を使えば場所を選ばずにどこでも視聴できるのがメリットです。
サイバーチェックで授業の理解度を確認
動画授業を見終わったら、サイバーチェックで理解度を確認します。サイバーチェックに合格すれば、次の動画の視聴に進めます。
ミニテストのような内容ですが、一定の判定基準が設けられているため、正解率が低いとサイバーチェックが完了にはなりません。
しっかり学習の理解度を確認して、次に進むようにしましょう。
レポートを作成し提出する
レポートもネットの画面上で作成します。選択問題だけでなく記述式の問題もあるので、考える力が身につきますよ。
レポートは1ヶ月で15本程度提出しますが、レポート作成や学習の途中でわからない点があればサイバー学習国の職員室で先生に質問ができます。質問BOXに不明点や聞きたいことを書き込めば先生に届きます。回答やアドバイスが返ってくるので、それを見て理解を深めていきましょう。
レポートは先生が添削して返してくれます。単位認定試験に備えて、しっかり復習しましょう。
体育や芸術科目などの実技科目はどうなる?
体育や美術、書道といった芸術科目では実技も必要になります。
アバターで参加するサイバー学習国では基本は動画視聴による授業ですが、実際に登校して実技の授業を受けたり、美術や書道の場合は作品を提出することで評価をしています。
クラスメイトとの交流
実際に登校することはないので、一般の高校のような放課後や部活動といった活動はありません。しかし、アバターを通してほかの生徒とのコミュニケーションを取ることができます。
サイバー学習国のホーム画面を開いて教室に入り、友達とチャットであいさつやテレビの話などをできます。
また、校庭で他の生徒とチャットでおしゃべりしたり、マイアイランドに集まって友達とパーティをしたりといったことも可能です。
サイバー学習国でのスクーリングと単位認定試験
たとえサイバー学習国でアバターを使って学習を進めたとしても、通信制高校を卒業するにはスクーリングへの出席や単位認定試験に合格して単位を修得しなければなりません。
サイバー学習国のスクーリングは年間4日程度
サイバー学習国で学ぶ場合、通学の必要がありません。
授業はすべてネットで配信される動画を視聴して受けられますし、ミニテスト(サイバーチェック)やレポート提出、質問もネットで完結します。
ただ、スクーリングはどうしても出席しなければなりません。
しかし、サイバー学習国の場合は年間4日程度で済みます。また、スクーリング会場は千葉県千葉市の本校の他に、東京や大阪にもスクーリング会場があります。
行きやすい会場を選んで参加しましょう。
スクーリングに参加するメリット
スクーリングは通信制高校を卒業するために、どうしても避けて通ることはできません。
過去に不登校を経験した人や対人面で不安を感じる人にとってスクーリングの参加は気が重いかも知れませんね。
しかし、サイバー学習国のスクーリングは動画の授業では十分に伝えられない内容や重要なポイントを教えてもらえます。
また、普段は先生もアバターとしてサイバー学習国に登場していますが、実際の先生に会えるのも楽しみのひとつです。
お互いに素顔を見せることで、また会話が弾むのではないでしょうか。それは友達に関しても言えることで、普段はアバターでコミュニケーションを取っている人とリアルに会えるのはとても楽しいことです。
ぜひ参加して交流を深めてくださいね。
サイバー学習国の単位認定試験
74単位を修得するには、それぞれの単位認定試験に合格しなければなりません。
サイバー学習国では年に1回登校して履修している科目の単位認定試験を受けるようになっています。合格すると単位が修得できます。
同校では試験対策にも力を入れていて、メールだけでなく電話や対面での指導など、出来る限りの方法を使って指導しています。
そういった先生方の熱い気持ちが感じられるのも同校の魅力ですね。
サイバー学習国のメリットとデメリット
どんなものにもメリットとデメリットがあります。サイバー学習国の場合もいい点とそうでない点があります。事前によく確認しておきましょう。
サイバー学習国のメリット
不登校やいじめを経験した人は、多くの人と関わることに不安や恐怖を感じます。その結果、高校進学を断念したり、進学したもののまた不登校になってしまったり……ということがあります。
しかし、サイバー学習国では自分の顔を出すことなく、アバターを使って友達とコミュニケーションができます。
言ってみれば仮面をつけて友達と接するような感覚です。お互いに相手の顔や声、表情がわからないので、不安感を抱くことなく交流ができるのがメリットです。
いつでもどこでも学習できる
サイバー学習国はネット環境があるところなら、どこででも学習できます。仕事の合間や移動中でもスマホの画面を見ながら勉強できるので、すき間時間を使って効率よく学習できます。
また、年に4日のスクーリング以外は学校に行くことがありません。制服や通学バッグ、通学の交通費などが不要という点もメリットだと言えます。
サイバー学習国のデメリット
このようなサイバー学習国のシステムを導入しているところはまだほとんどありません。そのためか、賛否両論があります。
特に否定的な意見としては学校生活がすべてネット上で完結してしまうため、引きこもりを助長したり、人との健全な人間関係が作れないのではないかといった意見があります。
しかし、スクーリングへの参加は必須となっているので、そこで実際に先生や友達と顔を合わせます。それまでにサイバー学習国の中でチャットでやりとりをしているので、壁を感じることなく会話ができるのではないでしょうか。
全教師がカウンセリング研修を受講
サイバー学習国のすべての教師は、カウンセリングの専門研修を受講しています。不登校や対人面での不安を感じる人をはじめ、学習のつまずきなどもきめ細かくフォローしています。
進路や進学の相談もこまめに対応しているので、安心して学べるでしょう。
なお、スポーツ界や芸能界などで活躍する忙しい人が利用しているのもサイバー学習国の特徴です。
保護者との連携もバッチリ
このようなネットを通しての学習の場合、子どもがきちんと勉強しているのかどうか、保護者の方が不安に感じることがあります。
しかし、サイバー学習国では保護者もサイバー学習国に入って進み具合や取り組み具合を確認できるようになっています。
また、学校側から保護者にメールでのお知らせや通知文書が届きますし、電話連絡や個人面談も実施しているので安心できます。
通信制高校のひとつのスタイルとして検討してみてはいかがでしょうか。