定時制高校とは?通信制高校との違いを分かりやすく徹底解説!
以前の定時制高校は働きながら通う生徒が多く、仕事が終わる夕方から夜間にかけて授業を行うのが主流でした。そのため、「苦労して勉強する勤労学生が学ぶところ」というイメージがありました。
しかし、最近では昼間に授業を行う定時制高校もあり、さまざまな生徒が学んでいます。
このページでは定時制高校の特徴や通信制高校の違いをわかりやすくご説明します。
定時制高校とは?
定時制高校は主に夜間に授業を行う高校を指します。
日本の高等学校には「全日制課程」「定時制課程」「通信制課程」があり、学校教育法ではそれぞれの課程を次のように定めています。
- 全日制課程……通常の時間帯で授業を行う課程
- 定時制課程……夜間その他特別の時間または時期において授業を行う課程
- 通信制課程……通信による教育を行う課程
このように全日制課程は昼間に授業を行いますが、定時制課程は夜間または午前、午後に授業を行うという違いがあります。
定時制と通信制高校の違い
一方、通信制課程は主に通信による授業を行っています。ここからはタイトルにもある定時制と通信制高校の違いを詳しく見ていきましょう。
なお、一般的に定時制課程がある高校を○○高校定時制課程、通信制課程がある高校を○○高校通信制課程と呼びますが、このページでは定時制高校、通信制高校で統一してご説明していきます。
学習場所が違う
まず定時制高校と通信制高校では、学習する場所が違います。
定時制高校は学校の教室で授業を受ける
定時制高校は毎日学校に登校して、教室で他の生徒と一緒に授業を受けます。
全日制高校ほど長い時間の授業ではありませんが、学校の教室での授業が基本です。
通信制高校はどこでも学習できる
通信制高校は毎日登校する必要はありません。
空いた時間に教科書を読んで勉強し、レポートを提出するので、自宅やバイト先など場所は問わずどこでも勉強できます。
月または年に数回、スクーリングや特別活動として学校に登校しますが、それ以外は登校する必要はありません。
特に最近の通信制高校はネット学習が充実しているので、社会人でも通勤途中や休み時間にスマホやタブレットで学習できますし、留学先からネットでレポート提出することもできます。
ただ、通信制高校でも学校で勉強したいという人のために通学コースを設けているところもたくさんあります。また、スクーリングは本校で受けて、それ以外は近くの学習センターやキャンパスに通学するというスタイルを取っている通信制高校もあります。
自分の好きなスタイルで学習できるのが通信制高校のメリットだと言えます。
通信制高校選びに迷ったら
学習時間が違う
定時制高校も通信制高校も、卒業までに3年以上かけて74単位を修得する必要があります。それぞれの学習時間の違いを見てみましょう。
定時制高校の学習時間
定時制高校は毎日登校し、4時間程度の授業を受けます。授業時間は学校によって異なり、午前だけ、午後だけ、または夕方からの授業を実施しています。
また、年間のカリキュラムに応じた時間割が組まれているので、それに沿って授業を受けるというスタイルになっています。
以前の定時制高校は1日4時間程度の授業だったので、3年で74単位を修得することはできませんでした。そのため、卒業要件も4年間在籍することとされていました。
しかし、平成元年に学校教育法が改正され、定時制高校の卒業要件が「3年以上の在籍」になりました。それを受けて、最近は定時制高校でも3年で卒業するコースと4年で卒業するコースができています。
3年で卒業する場合は1日で午前部と午後部、午後部と夜間部など複数の時間帯で授業を受けることになっています。
通信制高校の学習時間
一方で通信制高校は、特に勉強の時間制限はありません。3年以上かけて74単位を修得すればいいので、自宅で自分の好きな時間に学習に取り組みレポートを作成していけば大丈夫です。
朝に集中できない人は夜から学習を始めたり、逆に夜は眠いという人は朝早起きして勉強をすることもできます。
また、留年という概念がないので、単位が取れるまで何度でも試験にチャレンジできます。
登校日数が違う
定時制高校は基本的に毎日登校します。全日制高校と同じように夏休みや冬休みはありますし、カレンダー通りにゴールデンウィークや土日祝日も休みです。
通信制高校はスクーリングと特別活動、単位認定試験の日以外は登校せずとも良い学校が多いです。
※週5登校するコースもある
それぞれの内容と日数は次の通りですが、トータルで見ても登校日はそれほど多くありません。
しかし、どれも高校卒業に必要と国で定められているので、決められた日には登校するようにしましょう。
登校する機会 | 内容 | 日数 |
---|---|---|
スクーリング | 先生から指導を受けたり、学校行事に参加したりする | 月に1~2回または年間5日~20日程度 |
特別活動 | ホームルームや体育祭、部活動などの学校行事に参加する | 卒業するために3年間で30時間以上の参加が必要 |
単位認定試験 | レポート提出後に単位を修得するための試験 | 年間数日 |
なお、それぞれの登校日数は学校によって異なります。
例えば通学コースがある通信制高校では、任意で週1日~週5日登校できることが多いです。
全日制高校と同じようなキャンパルライフを楽しみたい人は通学コースを選択するといいでしょう。
通信制高校は単位制を採用している
通信制高校は単位制で、3年以上かけて74単位を修得することで卒業できます。留年がないので、自分のペースで時間をかけて高校卒業を目指せます。
一方、定時制高校には「学年制」と「単位制」があります。学年制の場合はそれぞれの学年で必要な単位を修得すれば卒業できますが、欠席が多い、試験に落ちたなどの理由で単位が取れないと留年になってしまいます。
最近では、生徒の状況に合わせて自由に学習が進められるという理由で、単位制を導入する定時制高校が増えています。
通信制高校は多数の専門コースがある
通信制高校と定時制高校の大きな違いの一つが、「コースの有無」でしょう。
定時制高校は普通科が中心なので、基本的にコースはありません。学校によっては商業科や総合技術科、農業科などが設けられていますが、それでも豊富とは言えません。
一方、私立の通信制高校は次のように多彩なコースがあり、将来の職業につながるもの趣味を楽しめるものなど幅広くあります。
- アニメ・マンガコース
- 芸能(声優・俳優・歌手・モデル・タレントなど)コース
- ペットコース
- 美容(メイク、ネイルなど)コース
- e-スポーツコース
- 調理・製菓・製パンコース
- 進学コース
また、各コースは実際に活躍するプロの講師による指導が受けられたり、学校に本格的なレッスン場、設備が揃っていることが多いです。
学校によっては数十種類~100種類ほどのコースが用意されていることもあります。
そのため、将来に役立つスキルを身につけられたり、自分の趣味ができたりと楽しく学校に通うことができます。
定時制と通信制高校の共通点
定時制高校と通信制高校には共通点もあります。
学費はどちらも同程度
通信制高校の方が高いと思われがちですが、実は学費は定時制高校も通信制高校も同程度です。
公立の定時制と通信制の学費を比較
公立の定時制高校と通信制高校の学費を比較してみましょう。こちらは東京都立の場合です。
学費の内訳 | 都立定時制高校 | 都立通信制高校 |
---|---|---|
入学金 | 2,100円 | 500円 |
授業料 | ・学年制の場合……32,400円/年間 ・単位制の場合……1,740円/1単位 |
336円/1単位 |
教科書代 | 科目によって異なる | 科目によって異なる |
その他 | 交通費など実費 | スクーリング時の交通費 レポート郵送代(100gまで15円)など |
年間の学費(入学金は除く) | 学年制:32,400円+教科書代など 単位制:43,500円+教科書代 |
8,400円+教科書代、送料など |
公立の定時制高校の年間授業料は学年制の場合は32,400円、単位制の場合は年間25単位を修得すると43,500円がかかります。
通信制高校は単位制であることがほとんどで、年間25単位の場合8,400円で済みます。このように、東京都に関しては定時制よりもむしろ通信制高校の方が安かったりします。
なお、どちらも国が高校の学費の一部を負担する「就学支援金制度」が利用できます。
この制度を利用すると、公立定時制高校で授業料が定額制(学年制)の場合は1ヶ月に2,700円(年間32,400円)が、単位制の場合は1単位あたり1,740円が支給(通算74単位、年間30単位まで)されるので、家庭によっては学費が実質無料になります。
公立の通信制高校も1単位あたり336円(通算74単位、年間30単位まで)が支給されるので、こちらも家庭の世帯収入によっては授業料は実質無料となります。
なお、受給の世帯年収の条件があります。詳細は以下の記事で解説していますので、合わせて参考にして下さい。
私立の定時制と通信制の比較
次に私立の場合を比較してみましょう。
学費の内訳 | 駿台学園高校 定時制課程 | ルネサンス高等学校 |
---|---|---|
入学金 | 80,000円 | 50,000円 |
授業料 | 12,000円/月額 (年間144,000円) |
10,000円/1単位 (年間25単位の場合25万円) |
施設費 | 80,000円 | 20,000円 |
諸費用 | ・冷暖房費……12,000円 ・情報教育費……2,000円 ・後援会費……12,000円 ・生徒会入会金……400円 ・生徒会費……7,800円/年額 |
・教育関連諸費用……60,000円 ・スクーリング費……65,000円 |
年間の学費(入学金は除く) | 258,200円 | 395,000円 |
このように私立の場合は定時制高校より通信制高校の方が学費の総額は高くなっています。
ただ、私立高校でも授業料に対して、国の高等学校等就学支援金制度が利用できます。
私立の定時制高校では、世帯年収が590万円未満の家庭は1ヶ月で最大33,000円(年間396,000円)の支援金が、単位制の場合は1単位あたり最大16,040円(年間25単位で401,000円)の支援金が支給されます。
私立の通信制高校では、世帯年収が590万円以上、910万円未満の家庭なら月額9,900円(年間118,800円)、単位制の場合1単位あたり4,812円の支援金が支給されます。
私立でも家庭によっては学費を全額支援金でカバーできる
上記の例で見てみると、私立の駿台学園高校定時制課程の授業料は授業料が月額12,000円なので、世帯年収が590万円未満の家庭は全額をかばーできます。
また、世帯収入がそれ以上の家庭でも9,900円まで支給されるので、学費の大半をカバーすることが可能です。
同様に通信制高校では、世帯年収が590万円未満の家庭は1単位あたり最大12,030円(それ以下の場合は相当金額)、590万円~910万円未満の世帯は1単位あたり最大4,812円が支給されます。
ルネサンス高等学校の授業料は1単位あたり10,000円なので、世帯年収が590万円未満の場合は全額支給、590万円以上910万円未満の家庭では4,812円/単位までが支給される計算です。
ただ、私立高校の場合は授業料以外の費用がかかります。また、学校によって学費が異なるので、事前によく確かめるようにしましょう。
どちらも幅広い年齢層の生徒がいる
文部科学省が実施している学校基本調査によると、全国の通信制高校の生徒数は全部で206,948人で、そのうち10代が182,294人で全体の88%を占めています。
しかし、60代以上の人もいて、幅広い年代の人が通信制高校で学んでいます。
(参考:文部科学省 学校基本調査
同様に定時制高校も50代~80代まで年齢が高い人でも通学して高校卒業をめざしています。
(参考:東京都定時制高校 生徒年齢構成)
若い世代では全日制高校が合わない、中学校や高校で不登校になった、スポーツや芸能活動に時間を使いたいなどの理由で通信制高校を選ぶ人が多いです。
しかし、年配の生徒の場合は若い頃になんらかの事情で高校を卒業できなかったけれど、時間や経済的な余裕ができたので定時制高校に入学して高卒資格を取りたい、というケースが多く見られます。
また、年配の生徒は学校に通って先生から直接指導を受けたいという理由もあり、定時制高校を選ぶケースも見られます。
定時制と通信制高校ならどっちがおすすめ?
定時制高校と通信制高校は共通する面もありますが、違いもあります。
それぞれどんな人におすすめなのか、詳しくご説明します。
定時制高校がおすすめの人
定時制高校におすすめなのは、次のような人です。
- 通学圏内に定時制高校がある
- 学費を安く抑えたい
- 早起きが苦手
- 昼間は働いている
- 毎日学校に行って規則正しい生活を送りたい
- 先生から直接指導を受けたい
ただ、定時制高校にはデメリットも多いです。
例えば定時制高校はほとんどが公立なので、各都道府県につき1校から数校しかありません。そのため、定時制高校を希望しても通える範囲に学校がないと通学は難しいでしょう。
住んでいる県の大きさにもよりますが、県内の定時制高校に通うおうとすると、片道の通学に3~4時間かかるというケースも珍しくありません。
定時制高校は、全日制だと学費が高いという人や、昼間は働きたいという人で、無理なく通える範囲に学校があればおすすめできます。
また、自宅学習が苦手であったり、自分ひとりでは誘惑に負ける、わからないところがあると先に進めないので先生から直接教えてもらいたい人などは定時制高校がおすすめです。
自宅ではついダラダラしてしまうという人も、定時制高校なら毎日通学するので規則正しい生活が過ごせるでしょう。
通いやすい範囲に定時制がない場合は通信制の方が良い
ただ定時制高校は通学にも無駄に時間がかかる事が多いので、近場に定時制高校がない場合は通信制高校に通うことをおすすめします。
また、定時制高校は卒業率があまり高くなく、生徒の約1割は退学するというデータもあります。本当に自分に合っているかどうかをよく考えるようにしましょう。
通信制高校がおすすめの人
逆に次のような人には通信制高校がおすすめです。
- 自分のやりたいこと(スポーツや芸能活動、趣味、仕事)などに時間をかけたい
- 毎日通学できないorしたくない
- 過去に不登校の経験があったり、人と接するのが不安
- 毎日の通学は抵抗があるが、週に1~2日なら通いたい
- 子育て中で毎日通学できない
- 働いているので夜間であっても通学が難しい
- いろいろなコースで学びたい
通信制高校は定時制と比較して登校日数が年に数日~数十日と少なく、自宅などで空いた時間に学習してレポートを提出することができます。
そのため、働いている人はもちろん、子育て中の人やスポーツ・趣味・芸能活動に打ち込みたい人にもおすすめできます。
また、年に数回~のスクーリング以外は同級生と会うことがないので、対人面で不安がある人、不登校ぎみの人でも安心して学習することが可能です。
通信制高校には全日制高校や定時制高校にはないユニークなコースが多く、学校によって様々なコースがあるので、いくつかの通信制高校で資料を取り寄せて比較検討してみるといいでしょう。
通信制高校選びに迷ったら
まとめ|定時制高校と通信制高校の違い
今回は定時制高校の仕組みや、通信制高校との違いについて紹介しました。
過去の「定時制高校は働きながら苦学して高校を卒業するところ」というイメージがありましたが、最近はさまざまな状況の人が学んでいます。
よく比較される通信制高校はユニークなコースがあり、自宅学習のほか通学コースも選べるので人気が高まっています。
それぞれの違いをよく理解して、自分に合う学校を選びましょう。迷った場合は事前に無料の資料請求をして、おすすめの学校を探してみると良いでしょう。