不登校に対する周囲の対応のポイントと通信制高校で高卒を目指す方法
文科省の調査では、中学校の不登校生徒数が全国で約103,000人、高校の不登校生徒数は約49,000人もいます。
親や学校の先生など周囲の人もその対応に苦慮しますが、何と言っても学校に行けない本人も悩んだり、つらい思いをしたりしてしまいます。
このページでは、子どもが中学校・高校を不登校になってしまった場合の周囲の対応と、進路の選択肢として通信制高校が利用できるという点について詳しく解説していきます。
不登校の子どもへの対応~国や学校の取り組み
「わが子が学校に行かなくなった」と不登校に直面すると、親は戸惑ってしまいます。叱ったり、なだめたりとさまざまな手を尽くそうとすることでしょう。
不登校に関しては、家庭や学校だけでなく国としても支援や対策に取り組んでいます。平成28年に文部科学省の「不登校に関する調査研究協力者会議」が報告したまとめから、いくつかご紹介します。
なお、ここでの不登校とは連続または断続して年間30日以上欠席し、「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にある(ただし、病気や経済的な理由によるものを除く)」と定義しています。
不登校の背景の分析
文部科学省では不登校の原因や背景を分析しています。平成18年度の実態調査では、不登校になる「きっかけ」で多いものとして次のような結果が出ています。
- 友人との関係……52.9%
- 生活の乱れ……34.2%
- 勉強がわからない……31.2%
また、不登校が続いてしまう要因は次の5つのケースに分類されるとしています。
・校則などへの反発
・生活リズムの乱れ
分類 | 割合 | 不登校のきっかけとなる出来事 |
---|---|---|
無気力型 | 40.8% | ・勉強がわからない ・生活のリズムの乱れ ・インターネットやメール、ゲームなどの影響 |
遊び・非行型 | 18.2% | |
人間関係型 | 17.7% | ・友人関係との関係 ・クラブや部活動の友人・先輩との関係 |
複合型 | 12.8% | |
その他型 | 8.7% |
家庭問題が背景にある場合も
不登校の背景にあるものとして近年注目されているのが、「ネグレクト」や「児童虐待」など家庭内の問題です。
さらにその背景には貧困家庭などの事情もあります。
特にネグレクトでは子どもを学校に行かせない、朝起こして登校をうながさないといったケースがあります。また、保護者が宿題を見ないために学習のつまずきをそのままにして、勉強がわからなくなり不登校につながるケースもあります。
不登校に対する取り組み
このような背景があることを踏まえて、次のような取り組みを行っています。
個々の生徒に合った支援計画 | 不登校生徒が抱える問題に合った支援計画を策定して、学校など関係者によって組織的に支援する |
個々の生徒に合った教育環境の提供 | 不登校生徒の特性に合った教育環境を提供する |
地域での支援 | 市区町村の教育委員会で教育支援センターを整備し、サポートする |
具体的な支援の方法は各学校や地域によって異なりますが、文部科学省としても不登校の児童生徒を減らし、学習機会を得られるように取り組んでいます。
不登校の予兆を早期に発見するチェックポイント
もし子どもが不登校になったら、どうすればいいのでしょうか。
まず親がやるべきことは、その原因を探ることです。原因がわかれば、学校と協力して対策を練ることができます。
しかし、不登校(学校に行かなくなって30日以上が経過するとき)になってからあれこれと聞き出しても、子どもは心を閉ざしてしまっている可能性があります。
そうなる前にもっと会話を増やしておきたいもの。そのためには、ふだんから子供としっかりとコミュニケーションをとっておくことが大切です。
また、原因がわかった場合でも、子どもを責めることのないように注意しましょう。
不登校になる前のチェックポイント
不登校の原因で多いのは、上でもご紹介したように勉強がわからないことや生活リズムの乱れによる無気力、遊びや非行の誘惑、そして学校での人間関係によるものです。
そのため、子どもの様子から次の点をチェックしてみましょう。
なお、これは小学生から高校生まですべてが対象です
- 表情がなんとなく暗くなった
- 学校のことをあまり話したがらない
- テストの結果を隠す
- 朝、なかなか起きて来ない
- 夜遅くまでスマホを触ったり、ゲームをしたりしている
- 親に隠し事をしている
- 必要以上のお金を欲しがる
中高生の不登校のチェックポイント
また、中学・高校生の場合は遊びや非行も不登校の要因になるため、次の点もチェックしてみましょう。
- 帰りが遅くなる
- 外泊をする
- 服装が派手になる
- タバコのにおいがする
- 高額なお金を欲しがる
非行に走らない場合でも、バイトの時間を増やしたりするとお金儲けの方が楽しくなってしまいます。さらにバイトの疲れで宿題ができない、授業中に居眠りをしてしまう……などが重なって、次第に学校が遠のいてしまうので要注意です。
不登校になった子どもへの家庭での対応
不登校になり原因がわかった後は、子どもとじっくり話し合ってみましょう。そのときに注意したいポイントをご紹介します。
不登校になった子どもへ対応~3つの注意点
- 子どもを否定しない
- プレッシャーを与えない
- 子どもの気持ちを尊重する
では、1つずつご説明します。
否定しない
不登校という現実を目の前にすると、親は「冷静になろう」と思っていてもつい子どもを叱りつけてしまいがちです。
会話ではまず相手を否定しないことが大切です。特に「お前が悪い」と決めつけると、子どもは親に対して心を閉ざしてしまいます。その後の関係が悪化し、修復するのに時間がかかることも。どんな言い分であっても、子どもの意見を聞いてあげましょう。
プレッシャーを与えない
親は子どもに対しては、なんとか学校に行ってほしいという気持ちが働きます。特に
「高校くらい出なきゃ社会で通用しないよ」
「中卒ではかっこ悪い」
「友だちの(または親せきの)○○ちゃんはいい成績を取って、△△校に進学を決めたらしいよ。お母さんは会わす顔がない」
「自分の人生なんだから、早く決めなさい」
など、子どもを追い込まないように気をつけてましょう。
今は何歳になっても高卒の学歴を取ることができますし、対人関係で不安を感じる場合は自宅学習が中心の通信制高校で学ぶ道もあります。
まず親がおおらかな気持ちで受け止めてあげましょう。
子どもの気持ちを尊重する
子どもは自分の気持ちをうまく説明できません。何か言いたそうにしていたら、親が先に答えを言わずに最後まで聞いてあげましょう。
また、子どもはどんな選択肢があるかも理解していません。保護者の方が通信制高校という方法があることを教えてあげましょう。
不登校の子どもに通信制高校がおススメの理由
不登校になった子どもが高卒の資格を取得するには、「高等学校卒業程度認定試験(略して高卒認定試験)」(旧大検)と「通信制高校」を卒業する方法があります。
両者の違いを知っておきましょう。
高卒認定試験と通信制高校の違い
高卒認定試験に合格すると、高校を卒業していなくても高卒と同程度の学力があるとみなされて大学(短大・専門学校を含む)を受験することができます。ただし、大学を卒業しないと学歴は中卒になってしまいます。
また、学校に通うことなく、自力で勉強しなければなりません。
一方、通信制高校は自宅で教科書やインターネットを使って学習し、課題レポートに取り組みます。レポートは教科書を見ながらできるので、それほど難しいものではありません。
登校は年に数回のスクーリングだけなので、不登校の人でも不安なく参加できます。
このようにして3年以上かけて74単位を修得することで、高校卒業ができます。
通信制高校は不登校の人でも安心して学べる
通信制高校は不登校の人や働きながら高校を卒業したい人、スポーツや芸能活動に取り組みたい人など、さまざまな状況の人が学んでいます。
その理由として次の点があげられます。
- 自宅学習が中心なので自分のペースで勉強できる
- 登校日数が少ないので不登校や対人面で不安な人でも安心
- 卒業までに何年かかってもいい
- 中学校の学習でつまずいたところから復習できる
- 個人指導やサポートが手厚い
- 将来に役立つ資格や技能が習得できる
- 不登校に理解がある
特に私立の通信制高校は不登校生徒に対しての理解があり、柔軟な対応や個人指導を行っています。
通信制高校なら中学校からの進学や高校からの転入も可能
中学校で不登校になった人が全日制高校に進学するのは勇気がいります。入試には合格しても、高校になじめないとまた不登校を繰り返す可能性もあります。
中学校ですでに不登校になった人は、進学先として通信制高校を検討してはいかがでしょうか。
私立の通信制高校にはさまざまなコースがあるので、子どもの興味や関心がある道に進むことができます。
一方、高校に進学したものの不登校になってしまった場合は、退学する前なら通信制高校に転入する方法があります。また、すでに高校を中退してしまった場合は編入して学び直すことができます。
いずれの場合でも全日制高校で修得した単位は引き継げるので、その分学習が楽になります。(単位引き継ぎの条件は学校によって異なります。)
「不登校=ダメなこと」ではありません。不登校でも高校卒業が可能ですし、むしろ全日制高校では学べない多種多様なコースがあるので、明るい未来が開けるのではないでしょうか。
不登校でも高校卒業は可能!
わが子が不登校になると、親は子どもを責めたり、世間体を気にしたりしがちです。
しかし、一番悩み、苦しんでいるのは子ども本人です。
まずは子どもの話をじっくり聞いてあげましょう。その上で将来のことを話し合うことが大切です。
通信制高校なら自宅学習で高校卒業資格を取得できます。さまざまなコースがあるので、興味を持つ学校を探してみましょう。