高卒認定試験とは?10のメリットやデメリット、合格率、費用など解説
高校卒業認定試験(高認)試験は、毎年2万5千人前後の人が受験しており、これに合格することで高校卒業者と同等以上の学力があると認定されます。
全日制高校や通信制高校に行かずに、高卒認定(高認)試験1本で進むことは、いったいどんなメリットがあるのでしょうか?
高卒認定試験(高等学校卒業程度認定試験)とは
高卒認定試験とは、その名の通り、高校を卒業していない人が高校卒業と同程度の学力があるのか認定するための試験です。
正式名称は「高等学校卒業程度認定試験」といい、略して「高認」とも呼ばれますが、このページでは「高卒認定試験または高認」としてご説明していきます。
高卒認定試験は平成16年度までは「大学入学資格検定(大検)」と呼ばれていましたが、平成17年度より高卒認定試験に変わりました。
取得にかかる費用
受験料は受験する科目数によって異なります。
後述する免除制度などにより、受験をする科目が少ない場合は費用も安く済むでしょう。
■高卒認定受験の費用
受験する科目数 | 受験料 |
---|---|
7科目以上 | 8,500円 |
4科目以上6科目以下 | 6,500円 |
3科目以下 | 4,500円 |
試験に落ちてしまった場合、再受験でも同様の費用がかかりますので可能な限り一発合格を目指した方が負担は少なくて済みます。
申込み日は?
基本的には毎年の4月上旬とに第一回を、7月下旬に第二回の申込みを開始しています。
2021年の場合は4月5日~と、7月20日~に申込みに必要な願書の配布を行っています。
高卒認定試験の願書について
教育事務所やネットで請求可能
高卒認定試験の出願書類(願書)は、各都道府県の配布場所やインターネットで請求することが可能です。
配布場所は教育事務所や教育局、東京都であれば都庁などで配布されています。
願書の配布時期は毎年4月上旬からとなっていますが、インターネットであれば教育事務所などで配布される前に予約することができて便利です。
そのため、基本的にはインターネットで請求することをおすすめします。請求は「全国学校案内資料管理事務センター」のホームページから行えます。
参考:https://telemail.jp/shingaku/pc/gakkou/kousotsu/index.php
ただ請求には200円程度の送料がかかります。
電話でも請求可能
電話番号「050-8601-0101」に電話することでも願書の請求が可能です。
電話をかけた後、2021年第一回目の高卒認定試験の場合は請求番号「232100」を入力して下さい。
その後は音声ガイダンスに従い手続きを進めれば、3~5日ほどで手元に届きます。
資料請求番号は試験によって異なるので、文部科学省のサイトを参考にして下さい。
参考:https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shiken/index.htm
高卒認定試験(高認)のメリット
高校に通わなくても資格を得られる
「通信制高校なら学校に行かなくても済む」と思っている人がいるのですが、厳密に言うとそうではありません。通信制高校は確かに自宅学習が基本なのですが、月に数回程度はスクーリングがあるので、そのときは学校に足を運ばなければなりません。
その点、高校卒業認定試験(高認)なら正真正銘まったく高校に通わなくても、試験にさえ受かれば高卒認定(高認)をもらうことができるメリットがあります。
「全日制高校で不登校になり、学校に通うことができない」「高校を中退したが、働きながら高卒と同等の資格を取りたい」という人には、高卒認定(高認)試験に合格するのがベストの方法といえるでしょう。
きちんと勉強すればほぼ確実に合格できる
高卒認定試験の合格率は30~40%です。そう聞くと「そんなに高くないのでは?」と思うかもしれませんが、実際はそうでもありません。
合格できない方の中には仕事を持っていて勉強する余裕がない人も多いので、その時間を確保できる人なら合格できる可能性はかなり高いのです。
高卒認定(高認)試験は1科目ずつ受験でき、100点満点中40点で合格
高卒認定試験の受験科目は8~10科目と多いのですが、1科目ずつ受験することができ科目ごとの合格率が70%以上です。
特に国語の合格率は97.2%、地理は96.6%と、ほとんどの人が合格しています。合格点も100点満点中ほぼ40点と低いので、50点を目指して勉強しても受かる可能性は高いでしょう。
高卒認定(高認)試験の課題は、中学生から高校1年生レベル
大学受験のように「一度に5教科受けて、落ちたら次の年にやり直し」というのではなく、高卒認定(高認)試験の場合、一度合格した教科は次回の試験で免除することができます。
しかも、高卒認定(高認)試験の課題は中学生から高校1年生レベルが中心なので、きちんと勉強をしていれば合格することは十分可能です。
試験科目の免除制度がある
高等学校卒業程度認定試験は、条件を満たすと一部の試験科目で「免除制度」を活用することあできます。
免除制度の条件
- 高等学校へ1年以上通って単位を取得している
- 高等専門学校(5年制)に1年以上通って単位を取得している
- 一定以上の数検、英検、歴検に合格している
(対応した科目の試験が免除になります) - 過去に高卒認定で合格した科目がある
(過去に合格した科目は免除となります) - 文部科学省指定の専修学校の高等課程に1年以上通っていた
なお、試験を免除できる科目は在籍していた高校の教育課程や取得していた単位、資格によって異なってきます。
例えば2級以上の数検を取っていたら必修科目の「数学」が免除され、準2級以上の英検を取っていたら「英語」が免除されると言った具合です。
また、免除には「単位修得証明書」や検定の「合格証明書」といった指定の書類などを提出した上で、受験願書の「免除申請欄」に◯を付ける必要があります。
全ての科目が免除になる場合
この場合も試験自体は受ける必要があります。
ただ通常と違い、科目の中から1つ好きな科目を選び、それに合格するだけで高卒認定試験の合格となります。
仮に全ての科目が免除であっても受験をせずに試験に合格することはできないのです。
自分をアピールするチャンスになる
たとえば高校を中退した人が、高卒認定試験に合格して就職面接をしたとします。当然ながらその理由は、面接官に訊ねられるでしょう。
しかし、そのときこそが自分をアピールするチャンスです!自分がいかにして高校中退という挫折を経験し、そこからどのように立ち直って高卒認定試験に合格したか、そしてその経験を仕事にどう生かしたいのかを、堂々と面接官に伝えましょう。
そこには他の応募者にはない人生のストーリーがあり、自分を強く印象付けることができるはずです。
人間的な豊かさを社員に求める企業もある
企業は、けっしてきれいな学歴の人材だけを求めているわけではありません。順風漫歩に歩いてきた人よりも、人の心の痛みがわかる人間的に豊かな社員を、求めている企業もあるのです。
「それでも高卒認定は高卒資格にはならないので不安」という人は、全日制高校や定時制高校・通信制高校への転入を考えた方が賢明です。
スピーディに合格・進学できる
高校を中退した後や、社会に出た後に「やっぱり大学に行きたい」と思ったとき、もう一度全日制の高校に入り直したり定時制の高校に通うはとても大変です。
また、学校に通う必要のない通信制高校であっても単位を取得して卒業するまでに3年という時間とお金もかかります。
その点、高卒認定(高認)試験なら合格すればすぐに大学や短大・専門学校に進学する資格を手にすることができます。
全日制高校に通う人でも、卒業が危ない場合は高卒認定(高認)試験を受けて大学や短大・専門学校を受験することが可能です。
大卒の肩書を持てば高校中退のレッテルは消える
学費の問題などはあるかもしれませんが、高卒認定(高認)を受けて大学に行った後、「大卒」という肩書をもって就職するのもひとつの方法です。
それによって高校中退というレッテルはほぼ無くなり、就職先の幅も格段に広がります。
高卒資格と同等の権利を得られる
高認に合格すると、高卒資格と同様に大学や一部国家資格の受験権利を得られるのはもちろん、Ao入試などの権利も得られます。
「高卒認定(高認)を受ける人は高校生じゃないから推薦は受けられないんじゃ?」と思っている人も多いのですが、実は高卒認定でも推薦を受けることはできるのです。
ただしすべての大学がOKというわけではないので、各大学の入試要項で推薦の有無を確認しましょう。大学によっては、高卒認定(高認)からAO入試を受けられます。
高卒認定試験(高認)を受けるデメリット
高卒認定試験に合格しても学歴は中卒のまま
先程も少し触れていましたが、高卒認定試験に合格しても「高校卒業」の学歴にはなりません。
つまり、中卒で高校に進学しなかった人や高校中退した人が高卒認定試験に合格しても最終学歴は「中卒」のままです。
また、大学入試に落ちたり大学に入っても卒業できなかった場合も最終学歴は「中卒」のままになってしまうのです。
ただし高卒認定試験を合格した後に無事大学を卒業すれば、最終学歴は中卒→大卒になります。
高卒認定(高認)試験の勉強は途中で挫折しやすい
全日制高校の場合は、勉強をしなければ教師に怒られますし、「友達もやっているから、自分もがんばらなくては」という気にもなります。通信制高校の場合も、サポート校に入っていれば勉強をサボっていると教師の指導が入るので、気を取り直すチャンスもあります。(これをメリットとするかどうかは人それぞれですが)
ところが、高卒認定(高認)試験の場合はサボっても誰にも何も言われず、励ましの言葉ももらえません。
そうすると、「今日ぐらい勉強をしなくてもいいだろう」というような甘え心が生まれ、途中で高卒認定(高認)試験に合格するのをあきらめてしまう人も多いのです。
独学で高卒認定(高認)を合格するのは難しい
独学で高卒認定(高認)試験を受験する場合、分からない部分があっても聞ける相手がいないので難易度が高いです。
合格できるか分からない不安と戦いながら独学で勉強を続けるというのは精神的にも大変なものがありますので、もし「自分は意思があまり強くない」と思う人は高卒認定(高認)試験突破のためのサポート校などを利用するのもひとつの方法です。
サポート校といっても学校や塾のように大人数の教室で勉強するわけではなく、一人ひとりの事情や環境に合わせて学習プランを立て、個別・または少人数で指導をしてくれます。
確実に合格したいと考えるなら、高卒認定(高認)のためのサポート校も視野に入れた方がよいかもしれません。
高卒認定に引け目を感じる人もいる
たとえ高卒認定(高認)試験に受かっても、「高卒として本当に認められるのだろうか?」「高卒じゃなくて高認だったというのは、恥ずかしくて周囲の人に言えない」というような引け目を感じている人もいます。
これは全日制高校や通信制高校を出た人にはない悩みです。
高認でも引け目を感じる必要はない
しかし、高卒認定(高認)にそんな引け目を感じる必要は、まったくありません。
高卒認定(高認)に合格した後に大学に進学する場合は最終学歴が大卒になるので、高卒か高認かということはほとんど問題視されないからです。
就職する際も履歴書に「高卒認定取得」と書くことで、高校卒業の条件を満たすことになります。実際、ここ数年は高卒者と同等に扱う企業も増えてきました。
そのため、「高卒認定取得」は就職に不利と考えるよりも、面接の際のアピールポイントと考えた方が良いかもしれません。
試験に受からなければいつまで経っても前に進めない
全日制高校は、学校側が何とか卒業させようという意向があるので、よほどのことが無い限り卒業できないということはありません。
ところが高卒認定(高認)の場合は、自分ががんばらなければ誰も声をかけてくれないので、「どうせやってもやらなくても、誰にも文句は言われない」と、最初の意欲がしぼんでしまう人が多いのです。
せっかく大学や専門学校への進学を目指して高卒認定(高認)試験を受けても、合格しなければ何の意味もありません。
高卒認定(高認)試験に重要なのは、中学校の勉強
誰にも苦手な科目というものがあるので、「ほかの7教科はすべてクリアしているのに、この科目だけは合格ラインに達しない」という場合があります。
そのときは、どのようにしたら良いのでしょうか?
高卒認定(高認)試験の場合は大学受験とは違って、「中学校を卒業したが、高校を卒業していない人」を想定して設問が作られます。
問題自体は中学生や高校1年生レベルなので、高校の教科書を最後まできっちりと勉強する必要はそれほどありません。
それよりも、しっかりマスターしていなければならないのは、中学校の勉強です。
中学校ではその科目の基礎を教えているので、基礎がわかっていなければ高校の問題が解けるはずがありません。まずは中学校の教科書を一通りやって、基礎をマスターすることが大切です。
たとえば数学で「二次関数がわからない」というときは、関数そのものがわかっていない可能性があります。中学校でやった一次関数の勉強に戻り、「関数とは何?」というところから勉強をスタートしましょう。
通信制高校選びに迷ったら
関ジャニのメンバーも高卒認定(高認)の道を選んだ!
他にも、高卒認定(高認)試験の勉強法はさまざまあります。インターネットなどで自分に合ったテクニックを調べて実践することで、試験の結果も変わってきます。
たとえば関ジャニのメンバーも仕事をしながらさまざまな勉強法を工夫し、高卒認定(高認)試験に合格したそうです!
そこまでがんばっても試験に受からないときは、もう自分一人で努力するだけでは、解決することはできないでしょう。高卒認定(高認)試験突破のためのサポート校を、利用することをお勧めします。
高卒認定試験の合格に必要な科目
高卒認定試験に合格するには8~10科目で一定以上の点数を取る必要があります。
テストの科目には必修科目と選択科目があり、その組み合わせによって8~10科目になります。
教科 | 試験科目 | 選択科目の数 | 合格要件 |
---|---|---|---|
国語 | 国語 | 1 | 必修 |
地理 歴史 |
世界史A 世界史B |
1 | 2科目のうちいずれか1科目必修 |
日本史A 日本史B |
1 | 4科目のうちいずれか1科目必修 | |
地理A 地理B |
|||
公民 | 現代社会 | 1又は2 | 「現代社会」1科目または「倫理」及び「政治・経済」の2科目いずれか必修 |
倫理 | |||
政治・経済 | |||
数学 | 数学 | 1 | 必修 |
理科 | 科学と人間生活 | 2又は3 | 以下の1.、2.のいずれかが必修 1「科学と人間生活」+「物理基礎」、「化学基礎」、「生物基礎」、「地学基礎」のうち1科目 (合計2科目) 2「物理基礎」、「化学基礎」、「生物基礎」、「地学基礎」のうち3科目(合計3科目) |
物理基礎 | |||
化学基礎 | |||
生物基礎 | |||
地学基礎 | |||
外国語 | 英語 | 1 | 必修 |
※国語、数学、英語、世界史は必修。その他は表の中から選択。
高卒認定試験(高認)に合格すれば公務員も目指せる
「訳あって高校を中退してしまったけれど、公務員になって地に足を付けて働きたい」と考えるなら、高卒認定(高認)を取って公務員になる方法もあります。
公務員の中でも、人気の高い職種は難関ですが、警察官や看護婦などは比較的仕事に就きやすい傾向にあります。
高校認定(高認)から警察官になる人は多い
警察官には大卒程度の学力を有する「1類」と、短大卒程度の学力を有する「2類」、高卒程度の学力を有する「3類」がありますが、高卒認定(高認)を受けて警察官になる場合は、3類からスタートします。
3類で入ると、ずっとそのままなのかというと、そんなことはありません。入ってからの努力次第で昇進することが可能です。
高校認定(高認)から看護婦になる人も多い
高卒認定を受けて看護師になる場合は、国が指定する看護婦養成施設(看護大学/4年、看護短大/3年、看護専門学校/3年)で、3年以上勉強することになります。在籍中は奨学金を受けながら学ぶことができ、系列病院に一定期間勤務すると、奨学金の返済が免除される場合もあります。
「すぐに働き始めたい」という人もいるのですが、看護婦の仕事は命に係わる重要な仕事なので、在学中にしっかりと基本をマスターすることが大切です。
また、公務員試験を受ける際に、高卒認定(高認)だから受からないということはありませんが、協調性や責任感・常識の有無などは社会人として厳しくチェックされます。
もともと協調性に乏しくて高校を中退した人の場合は、“社会人としての適性”という部分で厳しい評価をされる可能性があることは、自覚しておく必要があるでしょう。逆に考えると、公務員試験を受けることは、自分自身の生き方を見つめ直す良い機会になるかもしれません。
高卒認定試験(高認)のメリット、デメリットまとめ
高校中退や不登校・病気や怪我による長期入院・単位不足など、さまざまな理由で高校を卒業できずにいる人にとって、高卒認定(高認)試験は未来を切り拓くための突破口といえます。
高卒認定(高認)試験の勉強は大変ですが、自分の将来を長い目で見据えたとき挑戦してみる価値は大いにあるといえるでしょう。
ただ合格しても学歴は中卒のまま、独学となり出題範囲も広いせいでなかなか合格できない場合もあるなどデメリットもあります。
最終学歴を高卒にしたい、自宅で自力で学習するのが苦手という場合は高卒認定試験よりも通信制高校の方が楽なケースもあります。